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【阿里山の御神木】
電車が嘉義の駅についたのはお昼過ぎでした。 鈴鈴さんがあちこち回って阿里山行きの交通
手段を探してくれました。 阿里山といえば阿里山森林鉄道が有名。阿里山駅は海抜2190mで
東南アジア最高地点にあるため山をぐるぐる回ったり、 スイッチバックを4回も繰り返したりするとガイドブックに書かれていました。
時間的に阿里山鉄道には間に合わないようでした。 私たちは阿里山森林鉄道はあきらめ、バスかタクシーに乗ることにしました。
バスだと時間がかかりすぎるという鈴鈴さんのアドバイスもありタクシーに 乗ることにしました。
鈴鈴さんはいろいろ交渉してくれて2000元(約7,400円) で阿里山までの往復や市内観光をしてくれるタクシーを捜してきてくれました。
タクシーの運転手は呉さんという50代前半の男性で髪は短く刈り込んで 精悍な顔つきをしていました。
阿里山までは通 常3時間ぐらいかかります。 私たちには時間がありませんのでそのことを伝えると呉さんは2時間位
で行けると言います。 鈴鈴さんがそんなに早く行けるはずがないというのですが、 呉さんは自信満々です。
ホテルにチェックインして荷物を預け、私たちは阿里山に向けて出発しました。
くねくねと曲がる険しい山道が続きます。 椰子の森も見かけられます。 沖縄本島では見たことのない熱帯の景色に見え異国情緒がいっぱいです。

阿里山に行く途中には椰子の森が広がって熱帯の雰囲気が漂う
途中鈴鈴さんが高校時代の思い出を語ってくれました。 阿里山周辺には昔から高山民族が住んでいますが、
鈴鈴さんはその部族の青年に恋したそうです。 彼に会うためになんとバイクに乗ってこの険しい山道を4時間もかけて
行き来したそうです。 今からすればとても考えられないと鈴鈴さんは笑いながら話してくれました。
私たち夫婦は感心して聞いていました。
「とても情熱的な恋ですね。ところでその相手とはどうなったんですか?」
「ウーン、彼はツオウ族の人だったんだけど、 彼の村に行った時に私の友達の犬がいなくなっちゃったのよ。
まさかと思ったけど彼らが食べちゃったの。 なんで食べちゃったのぉ! と怒ったんだけれど、
彼は何が悪いのっていう顔をしていたわ。 それから気まずくなって通うのも大変だったし自然に別
れちゃった。」
鈴鈴さんの話を聞きながらツオウ族をはじめとする山岳民族には、 昔「首刈の風習」があったとガイドブックに書いてあったのを思い出しました。
彼らにとって犬は食材以外の何物でもなかったのでしょうね。
途中に「聖南宮」というお寺がありました。 つり橋を渡って山を少し登ると「天龍岩」という奇岩が突き出していて
その下に拝所がありました。 ここは氣エネルギーが強く出ているエネルギースポットでした。
すぐ近くに決して枯れることのない地下水が湧き出ていて、 「龍喉水」と書かれていました。 コップが置かれ自由に飲むことが出来ます。
味はさほどおいしいとは思いませんでしたが、喉を潤すことが出来ました。 沖縄の斎場御嶽などでも奇岩の下が拝所になっていますが、
台湾のように立派な拝殿は造りません。 自然そのままです。 こういうところで中国人と沖縄人の違いを感じました。

「天龍岩」とその下に造られた「聖南宮」

枯れることのないといわれている 「龍喉水」
聖南宮で少し時間を取られたこともあって、 タクシーはスピードを上げて車輪を鳴らしながら走っていきます。
前に走る車を見かけるとすぐ後ろにつけてじっと追い越す機会を狙っています。 センターラインは追い越し禁止の黄色い線が引かれているのですがお構いなしで
一気に追い越していきます。 台湾は右側通 行なのですが、 時々左側通行だったか右側通
行だったかわからなくなります。 彼には右車線も左車線もありません。 道路全体を自由に走っています。
そして、また前方に車を見つけると加速して追いつき一気に追い越していきます。 私はこの時ほど後部座席に座っていて良かったと思ったことはありません。
鈴鈴さんが「どうしてそんなに速く走れるの?」と尋ねると 「趣味は狩猟でしょっちゅう阿里山近辺に行っている。
三日前にも猟犬を連れて行って来た。慣れた道なのでいつも2時間位 で行く。」 と話してくれました。
バックミラー越しに呉さんの顔を見ると、 目が獲物を狙う猟師の目になっています。
こうして私たちの前を走る車はことごとく呉さんの標的になって 追い越されて行きました。
途中あちこちで崖が崩れていました。 道路の復旧もままならないようであちこちに大きな岩が転がっています。
早く走り抜けなければぐずぐずしているといつ落石に遭うかもしれません。 (後日聞いた話では、沖縄の観光客がここで落石に遭って亡くなったことが
実際にあったそうです。) 私たちは呉さんに命をあずけ、事故に遭わないように天に祈るしかありませんでした。
途中何度か立ち往生する事もありましたが呉さんは快調に飛ばし、 本当に2時間ちょっとで阿里山の登山口に到着しました。

阿里山に至る道は台風によってあちこちで崖が崩れていた
おかげで私たちは2時間ほど山歩きを楽しむことが出来ました。 阿里山は時折雲がかかり空気がとてもおいしく疲れがスッキリ取れてしまいました。
深い森には樹齢数千年の巨大な杉が残り別 世界です。 このままここから帰りたくない気持ちになりました。
そして、御神木に触れながら台湾の大地のエネルギーを身体一杯に浴びて 土地の神様と触れ合えたように感じました。
また、私たちはタイミングよく一部の区間だけ鉄道に乗ることも出来大満足でした。
次、阿里山に来る時には山のホテルで一泊したいと思いました。 阿里山は本当にお薦めの場所です。

聖なる森の中にたたずむ阿里山の御神木
生きていることを実感したい人、時間のない人はタクシー運転手の呉さんを お薦めします。ドライブテクニックは保障します。
嘉義駅で目つきの鋭い狩猟好きの運転手がいたらきっと呉さんです。
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